2011年12月11日(日)、「東日本大震災における高齢者介護施設のマネジメント~ケースメソッド教授法による学び~」を開催しました。会場の慶應ビジネススクールは、全国各地の医療や福祉の現場や教育の現場でご活躍されている方々39名が集まり、活発な議論が展開されました。
冒頭、主催者のヘルスサービス研究会メンバーの一人である秋山美紀より、遠方からの参加者やメンバー紹介があり、その後、当研究会が大震災時における介護施設のマネジメントを学ぶ目的で作成した新作ケース「姪のために帰らせてください」(後日、公開予定)に関するケースディスカッションが行われました。

ディスカッションは、同研究会メンバーである渡邉大輔(成蹊大学 アジア太平洋研究センター 客員研究員兼文学部非常勤助手)のリードで、まず、ケースでは書かれている状況について参加者全体で把握した後、事前に出題していた設問に沿った形で議論が展開されました。

参加者の多くはケースメソッドの経験者であり、ディスカッションの冒頭から、次々と発言が相次ぎました。介護従事者の職業倫理、緊急時における介護の内容、意思決定のあり方や役割分担など、異なる視点での意見が出され、約60分間のディスカッションが終了しました。
ディスカッション終了後には、参加者から、ケースディスカッションの進行やケースの内容についてフィードバックをいただきました。
さらに会の後半では、髙木晴夫先生(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 教授)が、前半のケースディスカッションに関する講評をくださいました。教育目標の立て方、ケースの作成やケースリードの際に気を付けるべき点について、具体的にわかりやすく講義をしてくださいました。髙木先生は、前半のケースの反省点を構造的に指摘した上で、改善の方向性を提示されました。参加者からも多くの質問があり、高木先生は、ケースの作成方法やケースリードの方法について、これまでの経験を交えながら具体的かつ実践的なアドバイスをされました。

ケースリーダーの渡邉大輔や一緒にケースを作成した伴英美子、中島民恵子をはじめとするHSRメンバー、そして参加者一同にとって学びの多い場になりました。
今回得た学びや皆様とのネットワークを、HSRの今後のケース作成に生かして行きたいと思っております。

テーマ:東日本大震災における高齢者介護施設のマネジメント
~ケースメソッド教育法による学び~
実施日: 12月11日(日)13:30~16:30
趣旨:
2011年3月11日、未曽有の地震と津波が東日本を襲った。ヘルスケア従事者の意思決定の一つ一つが、高齢者・子ども・患者など援助を必要とする者の生死を分かつという大変厳しい状況が、被災時から被災後にかけて生じた。
今年度のシンポジウムは、高齢者介護事業を営む社会福祉法人の経営者の東日本大震災における意思決定ケースを扱う。本ケースは介護従事者の価値観・倫理・求められる役割範囲、リスクマネジメント等について学びを深めることを目的として作成されている。実践者が討議に参加する場合は、自らの現場において応用可能な知見を得ることを目指す。
前半はケースの試運転、後半は慶應義塾大学大学院経営管理研究科の高木 晴夫教授による講話を予定している。
※ヘルス・サービス研究会(HSR)では活動の一環としてヘルスケア分野における「問題発見・問題解決」を目指したケース作成に取り組んでおり、本ケースはその一つである。
ケース概要:「東日本大震災における高齢者介護施設のマネジメント」
本ケースは岩手県において、高齢者介護事業を手掛ける社会福祉法人経営者の東関東大震災での経験を扱う。多くのインフラが失われ、従業員もまた被災者でありながらも、利用者の援助のみでなく地域住民の援助も求められる状況下におけるマネジメントについて討議を行う。
場所:慶應義塾大学大学院経営管理研究科(Keio Business School)
階段教室3 http://www.kbs.keio.ac.jp/access.html
対象者:介護・福祉事業経営管理者及び教育者。
ヘルスケア分野におけるケースメソッド教育法に関心のある方を対象とする。
定員 35名(先着順)
氏名、所属、住所(ケース送付先)、連絡先電話番号を書いて、以下のアドレスにお送りください。
申し込み先、hsrinfo@mag.keio.ac.jp
最終の申し込み締め切りは、11月30日(水)ですが、定員に達したら早めに締め切らせていただきます。
申し込みいただいた方には、事前にケースと設問をお送りします。
申し込みは締め切りました。多数のご応募ありがとうございました。(12月1日追記)
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 伴英美子
1月26日、厚生労働省・社会保障審議会介護給付費分科会は4月から介護報酬を全体で0.5%引き下げる改定案を了承した。介護報酬改定は原則3年に1回で、今回はその2回目、
昨年の介護保険制度改正の趣旨に沿った報酬改定となった。現行報酬と比較すると、在宅の軽度の要介護認定者向けにサービスを5%引き下げた一方、中・重度向けは4%引き上げ支援が強化された。また、「新予防給付」の創設、医療・介護の機能分担・連携強化、地域包括ケア・認知症ケアの確立、ケアマネジメント強化などが特色である。
伴は、医療・介護の機能分担・連携強化にむけての制度改正案を取り上げた。具体的には、介護報酬改定の基本方針、医療ニーズのある中重度要介護者への対応強化策としての加算の新設、療養型病床の見直しの3つのトピックについて概要説明を行った。療養型病床の見直しについては、市民シンポジウム 「社会的入院の解消と新しい介護サービスを求めて-医療・介護の将来像と療養病床の行方- 」の報告を行い、市民、行政、医療保険療養型病床施設経営者、研究者、それぞれの立場についても触れた。最後に、発表者からの問題提起があり、全員参加でディスカッションをおこなった。
話題提供: 話題提供:株式会社テレコンサービス 松澤佳郎さん
慶應ビジネススクールや海外のMBAコースなどで広く採用されている、ケースメソッド教育法について、慶應ビジネススクールのOBでもある株式会社テレコンサービスの松澤氏に概要、意義、現状について報告を受けた。
ケースメソッド教育法の従来の教育法と最大の違いは、受講生の主体性を最大限尊重し、教師は受講生の創発を引き出すように教室でナビゲートする役割を果たすとするところである。受講生は現実が書かれたケースを下に討論するが、その討論の内容は受講生が好きに行って構わず、教師は何かを「教える」のではなく、受講生が何かを「学び取れるよう」に少しだけ板書などを使い誘導するだけである。
この新規的な教育法は多くのビジネススクールで採用されているように、学習者の主体性を尊重し、現実の意志決定能力を涵養することに役立つと考えられている。
討論では、そもそも内容が観念的なものや事象の分析枠組自体が共有しにくいような問題・ケースをケースメソッド教育法のような方法だけで行うことができるのか、どのように従来の教育を含み混ませるべきか、HSRの行っているケースの利用のあり方についてどの程度までケースメソッド教育法役に立つかなどが議論された。
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 伴英美子
under construction now.
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 秋山美紀
under construction now.
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 渡辺大輔、同 古城隆雄
ヘルスサービスの問題も含め、福祉社会を構想していく上での前提であり、避けては通ることができな概念である「社会連帯について」、思想的側面と法的側面から報告を行った。
思想的側面に関しては、渡辺が報告した。もともと社会連帯は、近代国家建設と産業化の進展の中で、国民を連帯の基盤として保険制度による不確実性への対応を図ってきた。しかしながら現在のリスク科学や予防科学、生命科学の発達は不確実性が国民(社会の成員)全体に平等に広がっているのではないことを明らかにし、単に道徳的な意味ではなく本質的な意味で社会連帯の基盤に動揺が説明された。
また、法的側面に関しては古城が担当した
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 秋山美紀
under construction now.
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 古城隆雄、同 中島民恵子
介護高齢者のうち、約半数が何らかの認知症を患っていると言われており、これからの介護保険政策においては、認知症者に対する施策の重要性が説かれている。しかし、そもそも一般の要介護認定者と認知症者とでは抱える介護問題が異なるのか、必要なサービス量が異なるのか、それはなぜなのかといった根本的な説明は十分にはなされていない。これらの問題に答えるために、古城、中島は、認知症者に対して行われきた幅広い研究を横断的に見直している。勉強会では、①認知症とはなにか、②認知症者の現状、③認知症者本人とその家族が抱える問題の順に、これまでの研究からわかっている事柄について説明を行った。最後に、この研究を進めていく上での課題について、参加者を交えて意見交換を行なった。
報告者: 政策・メディア研究科後期博士課程 秋山美紀、同 古城隆雄
わが国の病床数に対して医療スタッフの数が少数であることや、生活習慣病の増加で医療費の伸びがGDPの増加の伸びを上回っている。秋山は、こうした医療制度改革の背景について、資料を用いながら紹介したあと、今回の医療制度改革のポイント(①在院日数の削減、②地域医療計画における医療費適正化目標の導入、③生活習慣病予防等)を概観した。続いて古城が、医療費の適正化問題と保険者の再編統合の趣旨について、その必要性と政策課題の観点から説明した。具体的には、現行の老人保健制度と新しい高齢者医療制度の差異を説明し、改善点を説明した。また、今後保健予防の充実が求められる中で、保険者に求められる具体的な役割について説明を行なった。最後に、参加者を交えて、今回の医療制度改革の内容について意見交換を行った。